Q&A

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Q. 統一特許裁判所(UPC)制度は、現在も実施される予定ですか?
A. 2020年2月に英国政府が単一特許および統一特許裁判所制度に参加しないことを確認し、2020年3月にドイツ連邦憲法裁判所(Bundesverfassungsgericht-BVerfG)が、ドイツの参加を承認する法案がドイツ連邦議会で十分な賛成票を得られなかったため無効であると主張したことにより、本制度の先行きは不明瞭な状況にありました。しかし、ドイツとその他の参加国は英国が不参加でも、推進することを決定しました。

準備委員会は、英国が離脱しても統一特許裁判所協定(UPCA)を改正する必要はないとの見解を示しています。第89条に基づき、統一特許裁判所協定は、2012年現在で有効な欧州特許数が最大である3ヶ国が批准するまで発効できないことになっています。その3ヶ国とはドイツ、フランス、英国です。ただし、準備委員会は、UPCAが署名された時点で英国の撤退は予測できなかったため、英国の離脱により残りの当事者の発効が妨げられることはないと考えています。また、裁判所の中央部のひとつがロンドンに置かれることが示されている第7条を修正する必要はなく、中央部が少なくとも暫定的にパリとミュンヘンのみで構成されるとUPCAを解釈できると考えています。 

ドイツの統一特許裁判所協定と暫定適用に関する議定書(PPA)の批准に係る新法案が、2020年9月に議会手続きに入り、今回は必要な連邦議会の3分の2の賛成票を得て可決しました。その後、12月18日に 連邦参議院で満場一致で可決されました。公布までに残されたステップは、連邦政府の署名、連邦大統領の署名、連邦法官報(Bundesgesetzblatt) への掲載です。しかし、連邦参議院の承認後まもなく、BVerfGは同日、法案に対して2件の憲法上の異議申し立てが提出されたことを報道機関に通知しました。これは全く予想外であったわけではありません。前回の憲法上の異議申し立てでは、ひとつの理由に対する判断が下されましたが、その他の理由については裁定されなかったからです。以前から新しい申し立てが提出されるという兆候がありました。   

BVerfGの異議申し立てがUPCプロジェクトにどのような影響を与えるかはまだわかりません。BVerfGは前回と同様に、申し立てが検討されている間、大統領に法律への署名を控えるよう求めることができます。BVerfGが迅速に棄却せず、前回のように決定までに長い時間を要してUPCプロジェクトに遅延をきたす場合、プロジェクトをやり抜く政治的意思がなくなる可能性があります。

Q. UPCが実効される場合、いつ頃開始されますか? 
A. BVerfGが2件の申し立てをすぐ棄却し、ドイツがUPCAを批准することを可能にする法律とPPAが発効されれば、2022年初頭に裁判所が開廷できるというのが現実的な見方です。 

裁判所が開始される前に、裁判官の採用などUPC制度の開始に向けた最終的な準備が行われる6~8か月間の暫定適用期間(PAP)が設けられています。また、裁判所の開始前に約3ヶ月間(PAPの後期)「サンライズ期間」が設定されており、「オプトアウト」を登録することができます。以下を参照してください。 

暫定適用期間(PAP)は、ドイツが暫定適用に関する議定書(PPA)を批准し、ドイツ以外の2ヶ国が同様の手続きをとった(あるいは、暫定適用期間に同意した)後に開始することができます。オーストリアやマルタを含むいくつかの国は、比較的短期間で対応できると思われます。 PAPが終了する3か月前に、ドイツはUPCAの批准書を寄託して協定を開始し、PAP終了直後に裁判所を開廷できることが期待されています。

Q. なぜ今すぐに、新制度を理解する必要があるのでしょうか?裁判所の業務がもうすぐ始まる時期まで待つことはできないのでしょうか?
A. 今すぐに新しい制度を理解すべき理由がいくつもあります。

  • 新制度は全ての既存の欧州特許に影響し、これらは自動的にUPCの専属管轄に服することとなりますが、適用除外(オプトアウト)ができる複雑な移行措置の対象になります。既存の欧州特許につき適用除外することによるすべての影響を検討するには時間が必要であり、その際には、適用除外をするのであれば、後述のとおり、UPCが開始する前に行うのが最善であり、かなりのデューデリジェンス作業が必要となりうることを念頭に置いておくべきです。
  • また、ライセンスを受けている特許についても検討する必要があり、それらの特許について適用除外する可能性について権利者と協議する必要があります。
  • 新たにライセンス契約や合弁契約をドラフトする場合には、UPC制度を考慮する必要があります。
  • 競合先や特許不実施団体(NPE)にとっては、おそらくUPCはEUの国内裁判所よりもずっと魅力的なものとなると思われますので、これらの者から新しい裁判所で訴えられる可能性(それは重大なものとなります)について認識しておく必要があります。
  • 新制度は、単に新しい裁判所を創設するだけではなく、特許権者がEUの大部分をカバーする一つの単一効特許を出願することができるものです。現在出願中の特許(2007年3月以前のものを除く)で制度開始後に付与されるものは、単一効の恩恵を受けることができる余地がありますが、将来の特許出願戦略を決定する上では、予算や訴訟といったファクターも考慮しなければなりません。
  • また、EPOでの異議申し立ての戦略を再考したいと考えるかもしれません。UPCは全てのEPC加盟国をカバーするものではありませんが、UPCでの中央一括での取消訴訟は、競合先の特許を攻撃するための代替的ないしは追加的な手段となるかもしれません。
  • さらには、R&Dや製造拠点をどこに置くかといった長期的な投資決定を行うに際して、より広域に効力が及ぶ差止命令を得ることが可能かどうかが影響すると考えるかもしれません。

Q. 自社の特許を新制度から適用除外(オプトアウト)したい場合には、どのようにすればいいのでしょうか?
A. 上述のとおり、既存の欧州特許及び公開された出願(これも適用除外することができます)をUPCから適用除外するかどうかについては慎重な考慮をすべきです。適用除外すると決定した場合には、裁判所の開始の3~6か月前に始まると予想される、いわゆる「サンライズ期間」に行うことが可能であり、そうすることをお勧めします。申請は、特許毎にされますが(特許権者毎ではありません)、電子的に行われ、一括で適用除外をすることもできます。手数料はかかりません。適用除外には、当該特許のすべての権利者(UPC協定に署名した国における欧州特許のすべての国内部分についての権利者(異なる場合)も含みます。)が関与しなければならないことに留意が必要です。誰が適用除外を申請しなければならないかを決めるのは、(EPOや国内の)登録簿にどう記載されているかではなく、「真の」権利者かどうかとなります。大きなパテントポートフォリオを有する場合、正しい権利者の確認には、内部的にかなりのデューデリジェンス作業が生じ得ます。Bristowsはオプトアウト手続きにつき指針を与えるとともに、オプトアウト戦略自体についても助言を行うことができます。
 
Q.   新たに付与される特許の単一保護を選択するかどうかを決定する際に、私が考慮すべき要素はどのようなものですか?
A.ほとんどの特許権者にとって主な考慮事項は予算です。  単一の特許は、付与日までにUPCに批准したすべての国でカバーされますが、国の数は16~20カ国におよぶ可能性があります。単一特許には検証費用がなく、翻訳は1つのみが必要となります。  ただし、更新(メンテナンス)料が発生します。検証する国が4つ未満であれば、単一特許が地理的に広くカバーされているといっても、通常そうであるように予算が決定的要素であるため、単一の特許が魅力的である可能性は低いです。

予算の面で単一特許が魅力的なものである場合にも、考慮すべき別の問題があります。それは単一特許に適用される訴訟制度です。  これらはUPCで訴訟を行うことが義務付けられ、オプトアウトすることはできません。  これには長所と短所があります。  長所は、1つの訴訟で中央的な法執行という大きな利点だけでなく、これらの特許には(UPCと国の両管轄で)経過期間がないことです。  マイナス面としては、UPCの発足時に問題が発生する可能性があるということです。これは、施行が期待どおりに簡単ではない可能性があることを意味します。そしてもちろん、中央的な執行の裏には、UPC中央部で開始された積極的な訴訟によるものを含めて中央的な取り消しがあるということです。

Q. 常に自国で訴えられることになるのでしょうか?
A. いいえ。規則は、被告の所在地 及び 侵害行為の場所を考慮して訴訟を起こすことができると定めています。グループ会社の場合、被疑侵害行為について多くの異なる子会社が関与することが多く、侵害が広範囲に広がることがあります。UPCの第一審の組織は複雑で複数の部門があり、大半の訴訟では提起されうる裁判地となり得る場所は10数か所に上る可能性があり、その選択は特許権者に委ねられています。したがって、UPCのどの部門でも訴えられる可能性がありますが、どの部門が利用されたとしても、その決定は同様にヨーロッパ全土に及ぶ効果を有します。

Q.   訴えられた場合、訴訟手続は自国の言語で行われることになるのでしょうか。
A.その場合もありますが、常にそうとは限りません。通常は、地方部または地域部の現地の言語、そして中央部の事件の場合は特許の言語で訴訟手続が行われることになっています。ほとんどの(おそらくすべての)部門では英語を選択することができ、特に各UPCの裁判体は異なる国籍の裁判官により構成され、これらの裁判官の共通言語は英語である可能性が高いことから、実務上の理由により主に英語が使用されると考えられます。

Q.   私は特許のライセンシーですが、 UPC で訴訟を起こすことはできますか?それとも特許を自ら保有していなければならないのでしょうか?
A. ライセンスで認められているのであれば、UPCで訴えることができます。ライセンスが非独占の場合であっても可能です。その後、特許権者は、訴訟手続に参加するかどうかを選択することができます。

Q.  UPC はフランス流の証拠保全を認めており、執行官が事前の通知なく訪ねて来て製品サンプルを要求すると聞いたのですが、本当ですか?
A.はい。原告は、UPCの管轄内ならどこでも証拠保全を行い、その後に訴訟を起こすかどうか決めることができます。好戦的な競合先がいる場合には、この可能性を認識する必要があります。

Q  UPC は事前の通知なしでも仮差止を命じることができると理解していますが、合っていますか?それを防ぐために何かできるのでしょうか?
A. UPCが仮差止を命じる広い権限を有しているというのは正しいです。事前通知をしない仮差止の申立ては稀であると思われますが、「保護レター(Protective Letter)」を(現在ドイツで可能なように)ルクセンブルグにあるUPC登録局に提出することにより、そのような事態を未然に防ぐことを試みることができます。この手続により、実際上、差止めの申立てがされた場合には、裁判所から通知がされるように要求することができます。したがって、これはUPCの開始前に検討すべき事項の一つです。
 
Q.  UPC の導入により現在行われている EPO での異議手続は影響を受けるのでしょうか?
A. いいえ。二つの管轄は併存して補完し合うものであり、UPCの開始は既存の、または将来開始される異議手続に影響しません。しかしながら、最終的にはUPCが最も重要な地域を指定した特許を取り消すことができ、EPOでの異議のような付与後9か月の期間制限の対象とならないことから、長期的にはEPOでの異議手続はそれほど頻繁には行われなくなると予想されます。
 

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