UPCに対するドイツの憲法違反決定とその影響

UPCに対するドイツの憲法違反決定とその影響

2020年3月26日

 

以前発信したように(こちら)、ドイツ連邦憲法裁判所(Bundesverfassungsgericht、略してBVerfG)による、ドイツが統一特許裁判所(UPC)協定を批准するために必要である法律に対する憲法違反訴訟は、主権の譲渡に必要な連邦議会全体の3分の2の賛成で議会を通過しなかった(したがって、基本法、つまりドイツ憲法に基づいた申立人の権利を侵害している)という根拠が認められた。案は全会一致で通過したものの、夜間遅い時間であり、全議員のごく一部のみが出席していた。2020年3月20日、BVerfGはこの2020年2月13日の決議(第二上院による)をドイツ語で、プレスリリースをドイツ語および英語で発表している。


連邦議会の過半数の点に対する主張は認められたが、その判決は連邦憲法裁判所(参議院)8名の裁判官の中で、5対3という最も僅小な差での多数決判決であった。この主張の許容に対する争点は、基本法において、主権の譲渡に必要である議会での多数決原理の欠如によって侵害されたということを、一個人の市民が自身の「民主主義に対する権利」を主張できるかどうかであった。反対する裁判官の懸念の1つは、そのような主張を許可すると、他の裁判官の意図とは反対に、ヨーロッパ統合が妨げられる可能性があることであった。


参議院連邦憲法裁判所は、訴状の他の部分は認められないと判断し、時折UPC協定が合憲であると考えられる理由を示した。以下がその要約である。

  • 訴状には、裁判官の選任と任命の手続きおよび裁判官の法的地位が、個人の民主的権利を侵害した理由について、根拠のある説明が提供されていなかった。また参議院連邦憲法裁判所によるコメントには、運営委員会にドイツ人委員が任命されたことと、BVerfGがドイツの国際法廷への参加に異議を唱えたことがないということが含まれていた。

  • 訴状では、UPCの手続き規則(本質的には運営委員会)を採用し、償還可能な代表費用の最大額を決定するための手続き(規則によって設定されている決定)が、個人の民主的権利に違反していると主張していた。連邦憲法裁判所は、EU貿易協定(つまりCETA)で規定されている理事会制度の形態は(加盟国が委員になることを保証していなかった)、民主主義の原則に影響を与える可能性があると以前に考えていたことを指摘した。しかし訴状では、なぜ同じようなことがUPCに適用されるのかを立証していなかった。確かにドイツは運営委員会の決定に平等に参加することになり、それらの決定は投票の4分の3による採決を必要とした。

  • 訴状は、UPC協定がEU法に違反していると主張していた。連邦憲法裁判所は、EU法の違反が国内法の無効につながることはなく(EU法は適用の点で国内法よりも優先されるのみで有効性は優先されない)、また基本法の違反を自動的に構成することもないと判示した。


もうひとつの憲法違憲の主張?

申立人はさらに次のように語り、さらに主張が提出される可能性があることを示唆したことが報告されている。「裁判所は実質的な主張を裁定することをせず、協定の合憲性に対するさらなる欠点を示唆した。連邦政府がこの決定からどのような結論を出すかはまだ不明である。これらの問題にかかわらず、ドイツ政府が引き続き条約を遵守する場合、憲法裁判所による新たな憲法審査への、おそらくは企業からの提訴を検討することになるだろう。」


さらなる提訴の潜在的な根拠は今の時点で明確ではない。認められない議論のいくつかが、個人ではなく会社であることによって申立人が克服できたとしても(申立人の発言が示唆するように)、UPC協定の基本法の遵守に関する連邦憲法裁判所のコメント(上記)は、その点について明らかな問題を示していない。しかし、連邦憲法裁判所は、EU法の優位性を確立するUPC協定の規定が基本法に違反するかどうかについては(必要ではなかったため)、判断をしなかったと述べた(段落141および166)。
 

UPC制度が開始する前に新たな訴訟が提出された場合、提訴が却下されてもその開始を遅らせることができる。
 

次の段階は?

今回のBVerfGによる判決と、英国がUPCに参加することをもはや意図していないという英国政府の発表に続き、UPCプロジェクトを継続する政治的欲求があるかどうか現時点ではわからない。UPC準備委員会は、BVerfGの判決の報告書で次のように述べている。「今回の判決によりさらなる遅延が生ずるという事実があろうとも、判決と今後の展開に対するさらなる分析がなされる間、我々の準備作業が続くことに変わりはない。当委員会のために働いているすべての同僚たちが、前例のない新型コロナウイルス問題に直面しつつも、これまでの流れを止めないよう、可能なあらゆるリソースを活用して前向きに取り組んでいることを知っていただきたい。」


続行の決定がなされた場合、ドイツ議会が採決に必要な数の賛成多数で議会(連邦参議院および連邦議会の両方)を通過させ、UPC協定の批准を可能にする必要があるだけでなく、英国が参加しないと仮定すれば UPC協定を修正が必要となる。 これらの手順はどちらも時間がかかる可能性がある。 新型コロナウイルス感染のパンデミックが続く中、ドイツ議会の通過は遅れる可能性が高く、また2021年には(おそらく8月から10月の間に)ドイツ連邦選挙が行われる。UPC協定の修正には、ロンドンにあるUPC中央部の所在地に関する残りの署名加盟国による合意が必要であり、さらに修正を求める他の要求が行われる可能性がある。理論的には、現在のUPC協定の承認を可能にするドイツの法律が今年成立した場合、UPCの仮申請フェーズ(裁判官募集などの最終準備を可能にする)は、EU法が依然として適用されるBrexit移行期にある英国が参加国として、始まる可能性がある。しかし、英国の参加なしで続行する決定が下され、批准を可能にするドイツの法律制定が議会に入る前にUPC協定が修正される可能性が高いと思われ、その場合、ドイツ連邦選挙の前に可決されなければ、さらに遅れが生じるであろう。

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